DC専用ファンド(2020年4月)、先進国株式ファンドへの資金流入が一段と拡大
DC専用ファンドの2020年4月の純資金流入額は約355億円で、12カ月連続の資金流入超となった。先進国株式に約197億円の資金流入となり。前月(約177億円)に続いて資金流入の中心となるアセットクラスとなった。国内株式は約31億円の資金流入と前月の約132億円の資金流出からは流入額が減った。一方、バランスとREITは前月の資金流出から資金流入に転換した。バランスへの資金流入額は約52億円、REITには約25億円の資金流入となった。コロナショックで世界の株式市場が混乱し大きく売られた3月と比べると、4月は比較的落ち着いた値動きとなった。DC市場でも3月は下落した国内株式や先進国株式を「逆張り」で買い向かうという特殊な資金動向だったが、4月はバランスやREITにも資金が向かう落ち着いた動きになったといえそうだ。
※4月の純資金流出入額は推計値
出所:モーニングスター作成
DC専用ファンド全体の純資産総額は約5兆8,754億円と前月の5兆6,267億円から約2,488億円増加した。資産配分状況は、株式ファンド39%、債券ファンド22%、バランスファンドに37%という割合で前月と比較して株式ファンドが1%ポイント上がり、債券ファンドが1%ポイント下がった。(※個別のDC規約では、DC専用ファンド以外のファンドを制度に採用している場合があるため、DC専用ファンド全体の純資産総額は、国内DC制度全体で運用されているファンドの残高とは一致しない)
出所:モーニングスター作成
資金流入額上位は外国株式インデックスファンドが席捲
DC専用ファンドの過去1カ月間の純資金流入額ランキングは、第1位が野村アセットマネジメントの「野村 外国株式インデックスファンド(確定拠出年金)」、第2位以下も「DIAM外国株式インデックスF<DC年金>」(アセットマネジメントOne)、「三井住友・DC外国株式インデックスファンドS」(三井住友DSアセットマネジメント)など、上位5番目まで先進国株式インデックス(MSCIコクサイ)に連動するファンドが並んだ。
第6位に「マイバランス50(確定拠出年金)」(野村アセット)、8位に「野村 J-REITファンド(確定拠出年金)」(同)がランクインしている以外、トップ10の8つを外国株式インデックスファンドが占めている。
外国株式インデックスに人気が集中した理由を考えると、MSCIコクサイの国別比率で70%程度を占めるアメリカの4月の株価回復が、世界の市場の中でも目立ったことがあげられる。国内株式インデックスよりも良いパフォーマンスになっているのは事実だ。長期投資を旨とするDCの運用において、コロナショックのようなショック安で、いち早くリカバリーの動きが見えることは、投資を継続する上での安心感になるだろう。
DC専用ファンドの過去1カ月間の純資金流入額ランキング
※2020年4月末時点、純資金流入額は推計値
出所:モーニングスター作成
トータルリターンのトップは「<DC>ベイリー・ギフォード世界長期成長株F」
個別ファンドの過去1年間のトータルリターンのトップは、「<DC>ベイリー・ギフォード世界長期成長株F」(三菱UFJ国際投信)になった。同ファンドは、英国で歴史のある運用会社であるベイリー・ギフォード・インベストメント・マネジメント(ヨーロッパ)リミテッドが実質的に運用する。世界の上場株式の中から長期的な成長が期待できる銘柄に厳選して投資している。20年3月末現在の組入銘柄数は33銘柄。組み入れ上位は、アマゾン(米)、テンセント(中)、アリババ(中)、テスラ(米)など。Eコマースなど一般消費財・サービスやSNSなどのコミュニケーション、そして、ITといった業種に合計で80%超を投資し、それに次ぐのが、ヘルスケアとなっており、コロナショックで注目を集めた「巣ごもり消費」やヘルスケア関連銘柄の上昇がパフォーマンスに反映したと考えられる。
前月トップだった「クスリのアオキホールディングス株式F(DC)」(野村アセットマネジメント)は第5位に後退。第2位に「大塚グループ株式F(確定拠出年金向け)」が入った。これらは、特定の株式の株価の動きに大きく影響を受ける。
一方、前月からパフォーマンス上位に入っている外国債券ファンドについては、第3位に「インデックスファンド海外債券H有(DC専用)」(日興アセット)、第4位に「GS・世界債券オープンA(確定拠出年金向け)」(ゴールドマン・サックス・アセット)がランクイン。両ファンドともに、為替ヘッジ付きだ。
なお、第7位から第9位までアセットマネジメントOneが運用する「リスク抑制型」のバランスファンドがランクインした。第7位の「リスク抑制世界8資産バランスファンド(DC)」と第8位の「投資のソムリエ<DC年金>リスク抑制型」は、基準価額の変動を年間2%程度に、そして、第9位の「投資のソムリエ<DC年金>」は年間4%程度に抑えながら安定した収益をめざすファンド。大きなリターンが期待できるファンドではないが、全般にマイナスに沈むパフォーマンスのファンドが多い場合は、リターンでトップ10に食い込んでくることになる。安定した運用を求める人たちには、改めてパフォーマンスの底堅さが印象付けられただろう。
DC専用ファンドのトータルリターン(1年)ランキング
※2020年4月末時点、純資金流出入額は推計値
出所:モーニングスター作成
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