DC専用ファンド(2020年1月)、バランス型に1,000億円を超える資金流入
DC専用ファンドの2020年1月の純資金流入額は約1,660億円で、9カ月連続の資金流入超となった。流入額の規模は、19年9月(2,226億円)以来、4カ月ぶりの高水準。バランスに約1,095億円の資金流入があった。個別ファンドで、三井住友トラスト・アセットマネジメントの「インデックスコレクション(バランス株式30)」に483億円の資金流入など、前月に引き続き三井住友TAMが運用するファンドに大量の資金流入があった。
※1月の純資金流出入額は推計値
出所:モーニングスター作成
DC専用ファンド全体の純資産総額は約6兆3,547億円と前月の6兆2,171億円から約1,376億円増加した。19年9月以来、5カ月連続で史上最高残高を更新し続けている。資産配分状況は、株式ファンド41%、債券ファンド20%、バランスファンドに36%という割合で前月と変わらなかった。(※個別のDC規約では、DC専用ファンド以外のファンドを制度に採用している場合があるため、DC専用ファンド全体の純資産総額は、国内DC制度全体で運用されているファンドの残高とは一致しない)
出所:モーニングスター作成
資金流入額トップは三井住友TAM「インデックスコレクション(バランス株式30)」
DC専用ファンドの過去1カ月間の純資金流入額ランキングは、第1位が三井住友トラスト・アセットマネジメントの「インデックスコレクション(バランス株式30)」、第2位以下も「DC世界経済インデックスファンド」「分散投資コア戦略ファンドS」「インデックスコレクション(外国株式)」「インデックスコレクション(外国債券)」と、三井住友TAMが運用するファンドが上位5位までを独占した。1月に最も大きな流出金額になったファンドが、流出金額3.44億円の規模であり、ファンド間で大規模なスイッチングが行われた可能性は低い。新規にDC制度が導入された、または、元本確保型商品から投資信託へのスイッチングが行われた可能性がある。
一方、月間資金流入額トップ10の第8位に「円キャッシュプラス・高金利先進国債券F(愛称:DC円キャッシュプラス)」(設定日:19年3月29日、設定・運用は日興アセットマネジメント)、第10位に「GSビッグデータ・ストラテジー(グローバル株式)DC」(同:19年4月12日、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント)がランクインした。ともに設定から1年が経過していない新しいファンドだ。
改正DC法によって、18年5月1日から、DC制度で提供する運用商品数の上限が35本に限定され、かつ、「指定運用方法(加入者が運用方法を指定しなかった場合に、自動的に掛金を運用する商品)」の選定・提示が始まった。この改正に伴って、「事業主はもっぱら加入者等の利益のみを考慮し運営管理機関を選定することが必要である」こと、また、「(事業主は)制度の実施主体として、(自社の制度を)自身で点検・確認し、運営管理機関との対話等を通じて、改善していくことが必要である」ことの徹底が、制度を実施する企業に求められるようになっている。この企業側の対応は、DC制度のガバナンスの点でおろそかにしてはならないポイントとされる。
改正DC法は、このような制度ガバナンスを徹底する意味で、運営管理機関を少なくとも5年に1回は見直すことを求めている。ここ数年に投信業界で起きたファンドの信託報酬率の引き下げ競争の影響は、比較的低めに設定されていたDC専用ファンドでも無視できないほどの変化をもたらした。特に、信託報酬率の引き下げが大きかったインデックスファンドについては、運用会社による運用力の差がほとんど出ない商品群といえ、「(原則)信託報酬率は低いほど良い」といえよう。「もっぱら加入者の利益を優先して考える」という立場にたてば、従前からある国内株インデックスファンドの平均信託報酬率「年0.66%」と同ファンドの最低手数料率「年0.15%」の差を見逃しておくことができるだろうか?
商品を入れ替えることによって、加入者は一旦現金化して新商品を購入するという手間はかかる。また、その手続きの期間は、市場変動の影響を受けないため、運用の連続性が途絶えるというデメリットもあるため、どの程度の差が銘柄入れ替えの条件となるかは明確な基準は設けにくい。ただ、カテゴリー平均よりも高い信託報酬率のファンドは等しく見直しの対象となるだろう。また、近年に開発された「リスク・コントロール型」などの新商品群の取り扱い、あるいは、米国ではDC運用商品の定番の一つになっているターゲット・イヤー(ターゲット・デート)ファンドなどの取り扱いも商品見直しのポイントになっている。
DC専用ファンドの過去1カ月間の純資金流入額ランキング
※2020年1月末時点、純資金流入額は推計値
出所:モーニングスター作成
トータルリターンのトップは「野村 世界SRIインデックスF(確定拠出年金)」
個別ファンドの過去1年間のトータルリターンのトップは、前月第5位に入った「野村 世界SRIインデックスF(確定拠出年金)」(野村アセットマネジメント)になった。前月トップの「フィデリティ・海外株式・ファンド(DC)」(フィデリティ投信)は5位に後退した。
また、第2位の「野村J-REITファンド(確定拠出年金)」(野村アセット)、第4位の「DCダイワ J-REITアクティブファンド」(大和証券投資信託委託)など国内REITファンドがトップ10に4本ランクインした。国内REITファンドは、好調な米国株式がけん引する外国株式ファンドとパフォーマンスを競い合っているようだ。
DC専用ファンドのトータルリターン(1年)ランキング
※2020年1月末時点、純資金流出入額は推計値
出所:モーニングスター作成
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