iDeCoの2月の新規加入者は4.4万人、18カ月ぶりに前年同月を割り込む
国民年金基金連合会が4月1日に発表したiDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)の業務状況によると、2月の新規加入者数は4万4,258人で加入者総数は234万7,278人になった。新規加入者数は4万人の大台は確保したものの、21年2月の新規加入者は4.6万人を超えており、前年同月との比較では2020年8月以来、18カ月ぶりにマイナス成長になった。この2年間ほど加入者増に拍車がかかっていたが、中でも21年2月~4月に新規加入者増の山が来ている。21年3月は約5.3万人という大きな加入者を獲得した月にあたり、来月は、この記録にどこまで迫れるのか注目したい。なお、従業員のiDeCoに企業が上乗せ拠出をするiDeCo+(中小事業主掛金納付制度)は、実施事業所数は4,083事業所、対象従業員数は2万5,731人になった。
2月の新規加入者の内訳は、第1号加入者は5,469人(前月5,458人)、第2号加入者は3万5,999人(前月3万3,670人)、第3号加入者は2,790人(前月2,517人)となり、全ての年金保険種別で前月を上回る加入者になった。なお、第2号加入者の中では、企業年金なしの新規加入者が2万1,454人(前月1万9,925人)。共済組合員(公務員)の新規加入者は8,738人(前月8,239人)となった。
2月の新規加入者数は全体では前年同月比4.2%減になった。前年同月比ではマイナスになったものの、一昨年2020年2月は4.2万人弱の新規加入者であり、一昨年と比較すると5.5%増の水準になる。iDeCoへの加入意欲は衰えたところはないと考えられる。
ただ、今年に入ってから、米国の利上げに向けた動きが顕在化し、加えて、2月下旬にはロシアによるウクライナ侵攻が勃発。加えて、コロナ禍については中国が中心都市上海でロックダウン(都市封鎖)を実施するなど、依然として感染拡大への備えが必要な状態が続いていることなど、経済の先行きを不透明にする要素が噴出し、米国株式をはじめ世界の株式市場が不安定な状況に陥っている。昨年末までは、米国の株価が史上最高値を更新し続けるほど、極めて好調な状態にあったため、株式に投資していれば資産が増えるということが実感できる環境だった。その追い風が逆風になりかねない環境になっており、それがiDeCoの新規加入者数にどのような影響を与えるのかに注目される。
iDeCoは60歳になるまで換金ができない、超長期の資産運用手段であるため、足元の株式投資環境の悪化は、新規加入のネックにはならないはずだ。むしろ、株価等が下落する局面では、積立てで購入していくことを考えれば、より安い価格で株式等を購入できるチャンスともいえ、将来の資産形成にはプラスの影響すら考えられる。長期・積立投資の効用について理解があれば、足元の不安定な市場環境に影響されることなく、新規加入の勢いは続くはずだ。非常に好調な新規加入者の状況が続いていた中で起こった市場の変調だけに、ここからの新規加入者の状況は、日本に資産運用のリテラシーが浸透したかどうかを量る試金石にもなりそうだ。

出所:モーニングスター作成
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