iDeCoの12月の新規加入者は4万人超、公的年金の減額発表で再び関心高まるか?
国民年金基金連合会が2月1日に発表したiDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)の業務状況によると、12月の新規加入者数は4万583人で加入者総数は227万5,454人になった。月間の新規加入者は、前月の3.7万人の落ち込みを挽回し、再び4万人の大台を回復した。なお、従業員のiDeCoに企業が上乗せ拠出をするiDeCo+(中小事業主掛金納付制度)は、実施事業所数は3,843事業所、対象従業員数は2万4,165人になった。
12月の新規加入者の内訳は、第2号加入者は3万3,516人(前月2万9,536人)、第3号加入者は2,143人(前月2,212人)となった。なお、第2号加入者の中では、企業年金なしの新規加入者が2万49人(前月1万8,291人)。共済組合員(公務員)の新規加入者は8,215人(前月6,560人)となった。
厚生労働省が1月21日に発表した「令和4年度の年金額改定」によると、今年4月分(6月支払い分)からの年金額は、国民年金(老齢基礎年金)の満額で月額6万4,816円となり、これまでの6万5,075円から0.40%(259円)の減額になる。減額は前年度から2年連続で、前年度の0.10%減額よりも大きな減額率になった。これによって、令和2年度の支給額である月額6万5,141円と比較すると、月額で325円減額されることになる。
公的年金の支給額は、年金額の改定ルールにのっとって決定されている。たとえば、名目手取り賃金変動率がマイナスで名目手取り賃金変動率が物価変動率を下回る場合、年金を受給し始める際の年金額(新規裁定年金)、受給中の年金額(既裁定年金)ともに、「名目手取り賃金変動率を用いることが法律で定められている。令和4年度の年金額は、名目手取り賃金変動率がマイナス0.40%であったため、その水準と同じだけ減額されることになる。「名目手取り賃金変動率」は、2年度前から4年度前までの3年度平均の実質賃金変動率に前年の物価変動率と可処分所得割合変化率(0.0%)を加えて計算される。
そして、将来世代の年金受給をより確かなものにするために設けられている「マクロ経済スライド」は、賃金や物価による改定率がマイナスの場合は調整を行わず、翌年度以降に繰り越されるため、本来はマイナス0.2%の調整(2年度前から4年度前までの3年度平均公的年金被保険者数の変動率0.1%+平均寿命の伸び率マイナス0.3%=マイナス0.2%)は、前年度のマイナス0.1%と加えて合計マイナス0.3%が繰り越されることになる。
このように公的年金の支給額は、ルールに従って毎年改定されているが、iDeCoの加入対象者が公務員や第3号被保険者にまで拡大された2017年1月以降の改定を振り返ると、2017年度はマイナス0.10%、18年度は変わらず、19年度はプラス0.10%、20年度はプラス0.21%で2年連続で増額改定となり、21年度から22年度にかけて2年連続でマイナス改定になる。iDeCoの新規加入者の増加数を振り返ってみると、18年度から20年度まで公的年金支給額がプラス方向で改定された期間は、加入者数の増大が抑えられ、21年度のように公的年金が減額された期間にはiDeCoへの加入者が増大する傾向がある。
iDeCoは、公的年金を補完する役割が期待される制度だけに、公的年金の支給額の動向が新規加入には大きな影響力があるということだろう。今回、2年連続のマイナス改定という厳しい結果になり、しかも、マクロ経済スライドでマイナス0.3%が先送りされていることを考え合わせれば来年度以降の改定も増額期待が持ちづらく、iDeCoへの加入意欲は一段と高まると考えられる。今後の動向を注意深く追っていきたい。

出所:モーニングスター作成
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