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先進国株式への資金流入が加速、純資金流入額は過去最高の427億円=DC専用ファンド(2021年11月)

2021/12/07 14:23

 DC専用ファンドの2021年11月の純資金流出入額は約573億円の流入超過になった。資金流入超過は2020年12月以降12カ月連続になった。先進国株式が約427億円の資金流入となり、資産別でトップ。資金流入額は6月の約406億円を超えて、記録を取り始めた2015年1月以来、最大の資金流入額になった。前月に資金流入額トップだったバランスは約101億円の資金流入にとどまり、先進国株式の流入額と比較すると4分の1以下の水準しかない。DCファンドの資金流入が先進国株式に集中しているようにみえる。国内株式は前月の約151億円の資金流入から一転して約16億円の資金流出になった。

 11月の資産クラス別の騰落率を調べると、主要株価指数の中では米国株式(S&P500)だけがプラス1.51%と上伸したものの、先進国株式(除く日本=MSCIコクサイ)はマイナス0.43%、国内株式(TOPIX)はマイナス3.61%、新興国株式(MSCIエマージング・マーケッツ)はマイナス4.32%、世界REIT(S&PグローバルREIT)がマイナス0.79%という結果だった。昨年末比に対し11月末時点で米国株式がプラス39.11%、世界REITがプラス39.09%と好調で、先進国株式のプラス33.33%が続いている。これに対し、国内株式や新興国株式はプラス8%台とは大きな差が開いている。前年に続いて好調なパフォーマンスが続いている先進国株式に資金が集中するのは、このようなパフォーマンスに対する評価の表れといえる。

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※ 11月の資金流出入額は推計値
出所:モーニングスター作成


 DC専用ファンド全体の純資産総額は約8兆5,048億円と前月から約663億円減少した。2020年11月以降12カ月連続で純資産総額は史上最高を更新し続けてきたが、13カ月ぶりに純資産総額が減少した。純資産総額に占める比率が19%程度の国内株式と同10%程度の新興国株式の価格が下落したことなどが響いた。資産配分状況は、株式ファンド47%、債券ファンド17%、バランスファンド34%という割合だった。株式ファンドの比率が1%上がった。(※個別のDC規約では、DC専用ファンド以外のファンドを制度に採用している場合があるため、DC専用ファンド全体の純資産総額は、国内DC制度全体で運用されているファンドの残高とは一致しない)
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※出所:モーニングスター作成


■資金流入額トップ10は先進国株式インデックスファンドが独占

 DC専用ファンドの過去1カ月間の純資金流入額ランキングは、トップ10を先進国株式インデックスファンドが独占した。先進国株式インデックスファンドのトータルリターン(1年)は36%を超え、また、信託報酬率も年0.15%~年0.28%と低く抑えられている。

 DC専用ファンドでは、一般の公募投信で人気が高い米国株価指数「S&P500」に連動するインデックスファンドの品揃えが少ない。現在のところ、専用ファンドのカテゴリーの中では「SMBC・DCインデックスファンド(S&P500)」のみになっている。同ファンドは、11月末時点の1年トータルリターンは41.18%と先進国株式インデックスファンドよりも高いリターンを残している。ただ、設定が2020年7月と歴史が浅く、未だ純資産総額は22.84億円程度にとどまる。先進国株式インデックスファンドを代表する「野村 外国株式インデックスファンド(確定拠出年金)」が約3,700億円の純資産額になっていることと比較すると、まだまだ小さなファンドだ。

 DC専用ファンドは、「年金を形成する」という目的に沿って、より安定した投資成果を実現できることをめざして「分散投資」を重視する傾向が強い。近年の世界の株式市場の潮流は、明らかに米国株式が市場全体をけん引する存在になっているが、「米国株式に投資しようと考えると、先進国株式インデックスファンドに投資する以外に方法がない」という企業型DC規約も少なくない。実際に、先進国株式インデックスでは米国株式が7割強を占める状況にあるため、「実質的に米国株式に投資しているに等しい」とはいえる。ただ、ここ数年のような米国株式優位の展開が続くようであれば、加入者(従業員)の間で、米国株式にピュアに投資する商品の追加を望む声が強まることも考えられる。

DC専用ファンドの過去1カ月間の純資金流入額ランキング

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※ 11月の資金流出入額は推計値
出所:モーニングスター作成


■トータルリターントップは「三井住友・DC外国株式アクティブ」

 個別ファンドの過去1年間のトータルリターンランキングのトップは、「三井住友・DC外国株式アクティブ」だった。第2位には、「三井住友・グローバル株式年金ファンドB」が入った。前月にリターントップだった「DCダイワ・グローバルREITインデックス」は3位に後退した。ただし、先進国REITインデックスファンドは、40%を超えるトータルリターンをあげて、トータルリターントップ10に6ファンドが入った。

 海外REITを対象としたファンド以外でトップ10に入ったのは、外国株式のインデックスファンドであるトップ2の2ファンドと、10位に食い込んだ「野村 世界ESG株式インデックス(確定拠出年金)」の3ファンドのみだった。

 「野村 世界ESG株式インデックス(確定拠出年金)」は、「FTSE 4Good Developed 100Index」に連動をめざすインデックスファンドだが、数ある外国株式アクティブファンドを抑えてリターントップ10に入るパフォーマンスを挙げた実績は注目に値する。


DC専用ファンドのトータルリターン(1年)ランキング

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※ 11月の資金流出入額は推計値
出所:モーニングスター作成


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