iDeCoニュース

DC専用ファンド(2021年8月)、「外国株式インデックス」に資金流入続く中で「リスク管理型バランス」に矛先向かう

2021/09/07 17:11

 DC専用ファンドの2021年8月の純資金流出入額は約470億円の流入超過になった。資金流入超過は2020年12月以降9カ月連続になった。21年1月から資金流入トップを続けている「先進国株式」は、流入額が約204億円となり、3月以降6カ月連続で流入額が200億円を超えている。次に流入額が多い「バランス」は約172億円の資金流入となり、こちらは5月以降4カ月連続で100億円以上の資金流入額になっている。また、前月まで2カ月連続で全ての資産分類別で資金流入となっていたが、8月はREIT(不動産投信)が0.3億円とわずかながら資金流出になった。

MH6-8.jpg

※ 8月の資金流出入額は推計値
出所:モーニングスター作成


 DC専用ファンド全体の純資産総額は約8兆2,797億円と前月から約1,512億円増加し、2020年11月以降10カ月連続で純資産総額は史上最高を更新し続けている。資産配分状況は、株式ファンド46%、債券ファンド17%、バランスファンド35%という割合だった。株式ファンドが前月から比率を1%引き上げた。世界的な低金利状態が続き、マイナス金利が常態化している中で、株式が選好される状況が続いている。1年前の20年8月には株式ファンドが40%で債券ファンドが21%、バランスファンド37%という比率だったが、そこから株式ファンドの比率が上がり、その分、債券ファンドの比率が下がっている。(※個別のDC規約ではDC専用ファンド以外のファンドを制度に採用している場合があり、かつ、DC専用ファンドが公募で取り扱われているケースもあるため、DC専用ファンドの純資産総額が国内DC制度全体で運用されているファンドの残高とは一致しない)
2108.jpg

出所:モーニングスター作成


資金流入額トップ10のうち8銘柄が「MSCIコクサイ」連動型

 DC専用ファンドの過去1カ月間の純資金流入額ランキングは、第1位は三井住友トラスト・アセットマネジメントの「インデックスコレクション(外国株式)」になった。前月まで5カ月連続でトップであった野村アセットマネジメントの「野村外国株式インデックスF(確定拠出年金)」は第2位に後退した。8月も先進国株式インデックスファンドへの資金流入が集中し、資金流入額トップ10のうち8銘柄が先進国株式インデックスである「MSCIコクサイ」に連動するインデックスファンドになった。

 ランキング上位の外国株式インデックスファンドは、運用コストにあたる信託報酬等が税込み年率で0.15%~0.28%と非常に低いコストに抑えられている。ただ、公募のインデックスファンドでは、低コスト競争の激化から同じ「MSCIコクサイ」に連動するインデックスファンドが税込み年率0.10%程度に抑えているファンドもある。確定拠出年金は、長期にわたる積立てを行っていくサービスであるだけに、コスト面では一段の引下げが期待されるところだ。

 一方、「野村DC運用戦略ファンド(愛称:ネクスト10)」(野村アセットマネジメント)が、バランスファンドながら資金流入ランキングの第3位に食い込んだ。同ファンドは、国内外の株式や債券、REITを投資対象とし、資産別の投資比率や外貨比率を適宜調整することによってポートフォリオのリスク水準を年率5%程度に抑えた運用をめざすファンドだ。常に一定程度のリスク水準を保つことによって、安定的な運用収益をめざすファンドになっている。8月末時点のリスクは1年で2.88%と5%に届かない安全運転を行っているが、トータルリターンは1年で3.87%を稼ぎ出している。

 21年8月末時点では外国株式インデックスファンドは、資金流入額トップの「インデックスコレクション(外国株式)」がリスクは1年で13.86%、トータルリターンが1年で36.43%という非常に効率的な運用成績になっているが、中長期の運用を考えると、外国株式は短期間に大きな値下がりになることも覚悟しなければならない。そのような時にも「リスクを5%程度に抑える」ことを目的とした「野村DC運用戦略ファンド(愛称:ネクスト10)」などは、株価の下落と比較すれば、はるかに下落率が小さくて済むだろう。

 外国株式が継続的に値上がりし、外国株式インデックスに関心が高まっているが、そのような時にこそ、せっかく積み上がった収益を守りながら増やすことを考えた動きが始まっているのかもしれない。DCの運用にあたっては、外国株式インデックスのように、世界の株高の勢いを収益につなげる「攻めの資産」と、バランスファンドのように資産の保全をより強く考えた「守りの資産」の組み合わせが必要と言われている。資金流入額ランキングにも、そのような攻守のバランスを考えた動きがうかがえる。

DC専用ファンドの過去1カ月間の純資金流入額ランキング

MFrank.jpg

※ 2021年8月末時点、資金流出入額は推計値
出所:モーニングスター作成


リターントップは「ベイリー・ギフォードESG世界株F」

 個別ファンドの過去1年間のトータルリターンランキングのトップは三菱UFJ国際投信のベイリー・ギフォードESG世界株F」になった。前月のトップだった「DC日産株ファンド」(三井住友TAM)は55位に、第2位の「ファンド・コロワイド(DC年金)」(アセットマネジメントOne)は371位に後退し、第3位だった「DCトヨタ自動車/トヨタグループ株式ファンド」(三井住友DSアセットマネジメント)が3位をキープしている。特定の企業のみに投資するファンドの好不調の大きさが分かる。一方、トップになったベイリー・ギフォードESG世界株F」は7月まで15カ月連続でトップを占めてきたベイリー・ギフォード世界長期成長株F」(三菱UFJ国際)を実質的に運用するベイリー・ギフォード社が、社会貢献と企業成長を同時に満たすインパクト投資という視点で企業を厳選して投資するファンドだ。

 また、前月は第4位だった「三菱UFJ DC厳選日本成長株オープン」(三菱UFJ国際)が第2位にランクアップした。そして、新たに国際REITを投資対象とした「DCダイワ・グローバルREITインデックス」(大和アセットマネジメント)と「DCグローバル・リート・セレクション」(岡三アセットマネジメント)がトータルリターンのトップ10の第9位と10位に入ってきたことにも注目したい。

DC専用ファンドのトータルリターン(1年)ランキング

TRrank.jpg

※ 2021年8月末時点、資金流出入額は推計値
出所:モーニングスター作成


【関連記事】
DC専用ファンド(2021年7月)、トータルリターンのトップ4は国内株式の銘柄特定・厳選ファンド
DC専用ファンド(2021年6月)、先進国株式を中心に高水準の資金流入が継続、純資産総額は8兆円を突破
DC専用ファンド(2021年5月)、先進国株式への資金流入が継続、純資産総額の株式ファンド比率は過去5年で最高の47%

    
    

バックナンバー

  1. 「先進国株式」への旺盛な資金流入が継続、国内株式は2カ月連続で資金流出=DC専用ファンド(2024年6月) ( 2024/7/05 17:54)
  2. 円安傾向が外国株式投資を促した?「先進国株式」への資金流入額が歴史的な規模に=DC専用ファンド(2024年5月) ( 2024/6/07 17:33)
  3. 資金流入額トップ10に国内株ファンドが大量にランクイン、パフォーマンス上位はアクティブが席巻=DC専用ファンド(2024年4月) ( 2024/5/10 17:12)
  4. 資金流入額トップを爆走する先進国株式、バランス型やREITにも資金流入が拡散=DC専用ファンド(2024年3月) ( 2024/4/08 18:12)
  5. 先進国株式に月間500億円を超える過去最大の資金流入、国内債券から資金流出継続=DC専用ファンド(2024年2月) ( 2024/3/08 17:12)
  6. 純資産総額が12兆円の大台越え、先進国株式インデックスファンドへの旺盛な資金流入が続く=DC専用ファンド(2024年1月) ( 2024/2/07 17:39)