DC専用ファンド(2021年7月)、トータルリターンのトップ4は国内株式の銘柄特定・厳選ファンド
DC専用ファンドの2021年7月の純資金流出入額は約613億円の流入超過になった。資金流入トップの「先進国株式」は、流入額が約274億円となり、3月以来5カ月連続で流入額が200億円を超えている。次に流入額が多い「バランス」は約191億円の資金流入となり、こちらは5月以来3カ月連続で100億円以上の資金流入額になっている。また、前月に引き続き、全ての資産分類別で資金流入となり、DCの運用において投資信託が広く活用されるようになっていることを感じさせる。
※ 7月の資金流出入額は推計値
出所:モーニングスター作成
DC専用ファンド全体の純資産総額は約8兆1,286億円と前月から約460億円増加し、昨年11月以来9カ月連続で純資産総額は史上最高を更新し続けている。資産配分状況は、株式ファンド45%、債券ファンド17%、バランスファンド35%という割合だった。債券ファンドが前月から比率を2%落とし、バランスファンドは前月に比べて2%比率を引き上げた。世界的な低金利状態が続き、マイナス金利が常態化している国内債券や欧州債券には資金が入りづらい状況になっている。(※個別のDC規約では、DC専用ファンド以外のファンドを制度に採用している場合があるため、DC専用ファンド全体の純資産総額は、国内DC制度全体で運用されているファンドの残高とは一致しない)
出所:モーニングスター作成
■資金流入額は5カ月連続「野村外国株式インデックスF(確定拠出年金)」がトップ
DC専用ファンドの過去1カ月間の純資金流入額ランキングは、第1位が5カ月連続で野村アセットマネジメントの「野村外国株式インデックスF(確定拠出年金)」になった。7月も先進国株式インデックスファンドへの資金流入が集中し、資金流入額トップ10のうち7銘柄が先進国株式インデックスファンドになった。先進国インデックスファンドのトータルリターン(1年)は依然として40%を超える高いリターンとなっており、運用先として有力な選択肢になっている。
一方、「分散投資コア戦略ファンドS」(三井住友トラスト・アセットマネジメント)が資金流入ランキングの第3位に食い込んだ。また、バランスファンドの中で、信託報酬率が0.12%と低コストな「多資産分散投資(バランス10)(確定拠出年金向け)」(野村アセット)が第7位になった。米国株式が史上最高値を更新するなど、先進国株式の一部には高値警戒感もあり、リスク分散の考え方から多資産に投資するバランスファンドへの注目度が高まってきているという見方もできる。
さらに、「DC外国株式ESGリーダーズインデックスファンド」(三井住友TAM)が第10位に入ったことも注目される。公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が主導するかたちで、ESG(環境・社会・企業統治)に配慮する投資が広がり、機関投資家から公募投信を購入する個人投資家の関心を高めているが、DC市場においても資金流入上位ファンドにESGファンドが入ってきた。運用会社各社は、DC向けにESGファンドの提供を強化しており、今後の人気カテゴリーの1つに育つ可能性がある。
DC専用ファンドの過去1カ月間の純資金流入額ランキング
※ 2021年7月末時点、資金流出入額は推計値
出所:モーニングスター作成
■リターントップは「DC日産株ファンド」が1位
個別ファンドの過去1年間のトータルリターンランキングのトップは「DC日産株ファンド」(三井住友TAM)になり、第2位に「ファンド・コロワイド(DC年金)」(アセットマネジメントOne)、第3位に「DCトヨタ自動車/トヨタグループ株式ファンド」(三井住友DSアセットマネジメント)が入り、トップ3を国内の特定銘柄・グループに投資するファンドが占めた。前月まで15カ月連続でトップを占めてきた「
第1位の「DC日産株ファンド」は、東京証券取引所に上場する日産自動車の普通株式のみを投資対象とするファンドで、日産自動車株式の株価と同等の値動きをする。日産自動車株は、2020年7月末の361円が21年7月末には630.9円と1年間で約75%値上がりしている。特に、今年6月末551.3円から1カ月間で14.43%値上がりし、この株価上昇がファンドの基準価額を押し上げた。同様に「ファンド・コロワイド(DC年金)」は、コロワイドの普通株式のみに投資。「DCトヨタ自動車/トヨタグループ株式ファンド」はトヨタ自動車の普通株式に50%、残る50%をトヨタ自動車グループ各社の普通株式に投資するファンドになっている。
一方、第4位に入った「三菱UFJ DC厳選日本成長株オープン」(三菱UFJ国際)は、成長に着目して選定した国内の35銘柄に主に投資するファンドだ。トータルリターントップ3が特定の企業や企業グループに投資するファンドであると同様に、第4位も少数の銘柄に厳選投資するファンドになった。投資対象を限定すると、その企業や企業グループの業績等の影響を強く受けるが、国内株式の中から成長力が高い銘柄をピックアップするという点では「三菱UFJ DC厳選日本成長株オープン」には、特定企業の業績に縛られることなく、継続的な成長に投資できるチャンスがある。もちろん、銘柄の選び方を間違えると、1銘柄当たりのファンド全体に与える影響が大きいために、パフォーマンスを大きく崩す要因になる。トータルリターンの上位4ファンドともに、投資リスクが比較的高いファンドになっている。
DC専用ファンドのトータルリターン(1年)ランキング
※ 2021年7月末時点、資金流出入額は推計値
出所:モーニングスター作成
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