iDeCoの3月の新規加入者は約5.3万人、制度改定以来約4年ぶりに5万人超え
国民年金基金連合会が5月6日に発表したiDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)の業務状況によると、3月の新規加入者数は5万2,687人で加入者総数は193万9,044人になった。月間の新規加入者が5万人の大台を超えたのは、2017年1月にiDeCoの大きな制度改定が実施され、公務員や第3号被保険者にも開放されて加入者が大幅に増えた時以来、約4年ぶりのことで、iDeCoへの新規加入が加速している。従業員のiDeCoに企業が上乗せ拠出をするiDeCo+(イデコプラス、中小事業主掛金納付制度)は、実施事業所数は2,687事業所、対象従業員数は1万7,007人になった。
3月の新規加入者の内訳は、第1号加入者が6,497人(前月6,324人)、第2号加入者は4万3,388人(前月3万6,890人)、第3号加入者は2,802人(前月2,982人)となった。なお、第2号加入者の中では、企業年金なしの新規加入者が2万5,507人(前月2万1,835人)、共済組合員(公務員)の新規加入者は1万766人(前月9,056人)となった。
第1号加入者の新規加入は2カ月連続で6,000人を超えて史上最高を更新した。前年同月比で比較すると、第1号加入者が前年同月比91.1%増、第2号加入者が同33.9%増、第3号加入者が76.6%増と、前月に引き続いて第1号と第3号加入者の増加が目立ったが、その勢いが第2号加入者にも波及してきた。
2017年1月の制度改定直後以来の新規加入者増になっているが、これは、17年1月以来の4年余りの年月によって、iDeCoの制度や魅力が認知され、「老後資金の準備のため、大きな節税メリットのあるiDeCoは、もっとも有効な手段である」ということが浸透したためと考えられる。2019年の「老後2000万円問題」があぶり出した「公的年金制度の限界への備え」の必要性、そして、2020年のコロナ・パンデミックによる「未知なるリスクへの備え」の必要性など、「若いうちからコツコツ積立投資すること」を促すような事象が続いている。
年金問題もコロナ禍も、「働きたいのに働けない」という現実に否応なく直面させられる時、「先立つものは金(カネ)」であることを思い知らされるような出来事といえる。ところが、現在の「ゼロ金利」では、預貯金での利殖は望めず、将来のインフレリスクを回避して資産を積み上げるには、投資するリスクを冒して株式等の価格変動商品を使ってトータルリターン(値上がり益と配当・利子等の保有することで得られる収入の合計)を追求せざるを得ない状況だ。投資商品の価格変動リスクを避ける手段としては、「分散投資」、かつ、「長期投資」の他に手立てはない。分散投資を実践する投資商品として「投資信託」が選ばれている。
そして、運用収益非課税で長期に投資するメリットを実感させてくれる投資制度として「iDeCo」や「つみたてNISA」が選ばれるようになっている。中でも、iDeCoは、60歳までは換金できない(現金化できない)というデメリットのかわりに、「投資資金が全額所得控除の対象になる」というメリットがある。月間で5万人以上の新規加入が実現された背景には、このようなiDeCo活用のメリットが広く浸透し、「老後の資金づくりはiDeCoで!」という意識が国民の間に定着したことがあるように感じられる。
2020年3月末現在で第1号加入対象者(国民年金第1号被保険者から保険料免除者を除く)が約851万人であり、21年3月時点のiDeCo加入者21万6,848人は人は加入率で2.55%だ。同じく、第3号加入対象者820万人のうち、iDeCo加入者は7万4,547人なので加入率は0.91%。第2号加入対象者は勤め先の年金制度の関係でiDeCoには加入できない人がいるものの、厚生年金の被保険者数4,485万人に対して、iDeCo加入者は164万7,649人であり、3.67%の加入率になる。いずれにしても、加入対象者に対して現在のiDeCoへの加入率は4%にも満たないわずかな比率だ。現在の加入者増が、制度への理解が定着した結果であれば、まだまだ拡大余地が大きいといえる。今後、月間の加入者数が高い水準で定着するかどうかに注目していきたい。
出所:モーニングスター作成
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