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松井証券がiDeCo 運用商品を12本から40本に大幅拡充、運用の自在性高まる

2020/10/13 18:24

 松井証券は10月18日にiDeCo(個人型確定拠出年金)の運用商品ラインナップを大幅に拡充する。従来は、「国内株式」「先進国債券」など資産クラスごとに基本的に1本の商品をラインナップし、全体で12本の運用商品構成だったが、今回は資産クラスに性格の異なる複数のファンドを追加し、さらに、従来はなかったターゲットイヤー型の商品も取り入れたことで、合計40本のラインアップとなった。追加した商品はインデックスファンドばかりで、運用コストは業界でも最低水準の運用商品構成になっている。

 国内株式では、従来はアクティブファンドの「ひふみ年金」とインデックスファンドの「One DC国内株式インデックス」(ベンチマークはTOPIX)の2本だったが、新たに「eMAXIS Slim」シリーズの「国内株式(TOPIX)」「国内株式(日経平均)」、そして、「<購入・換金手数料なし>ニッセイJPX日経400インデックス」が加わった。これによって、国内株式の代表的なインデックスである「TOPIX」「日経平均株価」「JPX日経400」のどれでも選択できるようになった。

 先進国株式は、従来は「eMAXIS Slim先進国株式インデックス」(ベンチマークは、MSCIコクサイ ・インデックス)1本だけだったが、新たに「iFree NYダウ・インデックス」「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」「楽天・全米株式インデックス・ファンド」が加わった。さらに、全世界株式に投資する「楽天・全世界株式インデックス・ファンド」「eMAXIS Slim全世界株式(3地域均等型)」「eMAXIS Slim全世界株式(除く日本)」「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」が加わった。海外株式投資のラインナップが特に充実した。

 また、外国債券とコモディティ(ゴールド・インデックス)については、従来のラインナップに「為替ヘッジあり」を追加。国内外のリートでは、従来よりも信託報酬率が低い「eMAXIS Slim国内リートインデックス」「eMAXIS Slim先進国リートインデックス」を追加している。

 一方、バランス型は「eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)」の1本だけだったが、新たにバランス型で運用しつつ、期間の違いによって資産配分比率を自動的に変更するターゲットイヤー型のファンドを導入した。「三菱UFJターゲット・イヤー・ファンド(確定拠出年金)」(2030/2035/2040/2045/2050/2055/2060)と「セレブライフ・ストーリー」(2025/2035/2045/2055)だ。退職時期等の目標年次を2045年、2055年などから選んで投資すると、目標年次までの期間が長い場合は株式などリスク資産に多く配分し、目標年次が接近するにしたがって債券などリスクが小さな資産を多く配分するように運用ポートフォリオを自動的に変更してくれるファンド群だ。米国の確定拠出年金制度(401k)では運用の主力商品として幅広く利用されている。

 「三菱UFJターゲット・イヤー・ファンド」と「セレブライフ・ストーリー」は、目標年次に到達した段階での最終ポートフォリオが、「セレブライフ・ストーリー」では債券が75%、株式などリスク資産が25%となっており、リスク資産の保有比率がやや高くなっている点が違う。

 今回の新商品追加にあたって、松井証券では「松井のiDeCoは低コストの厳選ラインナップだから安心」という評価を崩さないラインナップにしたという。実際に、追加された商品はインデックスファンドのみであり、コストの点では、新興国債券の「eMAXIS 新興国債券インデックス(為替ヘッジあり)」の年0.66%(税込み)やターゲット・イヤー型ファンド(年0.396%~0.484%)を除いて、主に信託報酬が年0.2%未満のファンドを揃えている。

 松井証券では、投信の取り扱いについては、約1200本の全ての取り扱い商品の購入時手数料を無料とし、かつ、信託報酬についても販売会社として同社が受け取る手数料が年0.3%を超える部分は毎月、顧客に返還する制度を導入している(対象ファンド914本)。徹底した低コストが同社の投信サービスの特徴になっている。「松井のiDeCo」についても、低コストが最大の特徴といえる。

 現在、制度上の規制として、運用商品の上限は35本という決まりがある(ターゲットイヤー型は、1シリーズを1本で数える)。その規制によると、今回のラインアップ拡充によって、ラインナップは31本となり、上限に接近した。同社では、商品の拡充については、加入者からの要望に応じて、加入者が希望する商品を取り入れたとしているが、今後、加入者の間で「アクティブファンドが欲しい」という声が高まった場合の対応に苦慮しそうだ。

 現実問題として、iDeCoは老後資産を長期の積立で作っていくベースの制度としての位置づけが一般的であるため、ベースの資産はインデックスファンドを使った低コストのファンドで行い、アクティブファンドなどの活用は、一般の口座で行うということが主流になるのかもしれない。たとえば、iDeCoで毎月2万円を30年間積み立てても、30年後の元本は720万円にすぎない。年率3%平均で運用ができたとして非課税で合計1,160万円、年5%平均で約1,640万円だ。iDeCoの拠出限度額には限りがあるため、限度がある中で最大限のメリットを得るという観点にたてば、「松井のiDeCo」が提供する低コストのファンドで揃えたラインナップは、魅力的なラインナップと評価もできる。

 そして、iDeCoは、つみたてNISAが解約した場合は非課税の枠の外に出てしまうことと違って、運用商品を非課税のままで自由に入れ替えて、自分好みの運用ポートフォリオで運用を続けられるメリットがある。その点では、国内株式から海外株式まで、株式のラインナップが幅広く揃い、かつ、債券等では為替ヘッジのあるなしが揃った新ラインナップは、資産運用を自分好みにできる十分なラインナップが揃ったといってもいいだろう。

 「松井のiDeCo」は月々にかかる「運営管理機関手数料」が無料という、もっとも運用コストが低いiDeCoのひとつでもある。新ラインナップによって、より関心が高まることを期待したい。

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