「先進国株式」への旺盛な資金流入が継続、国内株式は2カ月連続で資金流出=DC専用ファンド(2024年6月)
DC専用ファンドの2024年6月の純資金流出入額(速報値)は約774億円の資金流入超過になった。資金流入超過は2020年12月以降43カ月連続、流入額の規模は前月(994億円)より減少したものの、過去1年間の平均(673億円)を大きく上回っている。流入額のトップは前月同様に「先進国株式」で流入額は570億円だった。また、「バランス」に103億円の資金流入があった。一方、「国内株式」は前月(8億円の資金流出)に続いて2カ月連続の資金流出(約7億円)になった。国内株式は7月に入ってから、TOPIX(東証株価指数)が34年半ぶりに史上最高値を更新するなど、上昇力を強めている。6月は米国株価(S&P500とNASDAQ総合)こそ史上最高値を更新したものの、国内株は高値を更新するまで上がってはいなかった。この株価の勢いの差が資金流出入にも影響していると考えられる。
DC専用ファンド全体の純資産総額は約14兆96億円と前月から約5,312億円増加して8カ月連続で過去最高を更新した。残高の内訳は、株式ファンド56%、債券ファンド12%、バランスファンド31%という割合で、前月と比較して株式ファンドの比率が1%ポイント高くなった。(※個別のDC規約では、DC専用ファンド以外のファンドを制度に採用している場合があるため、DC専用ファンド全体の純資産総額は、国内DC制度全体で運用されているファンドの残高とは一致しない)
資金流入額のトップは「野村 外国株式インデックスファンド(確定拠出年金)」
DC専用ファンドの過去1カ月間の純資金流入額ランキングのトップは、前月同様に「野村 外国株式インデックスファンド・MSCI-KOKUSAI(確定拠出年金向け)」だった。トップから5位までを先進国株式インデックスファンドが占め、トップ10のうち7銘柄を先進国株式インデックスファンドが占めた。
DC市場の人気銘柄は依然として「外国株式インデックスファンド」になっている。公募投信市場では、「S&P500」、または、「MSCI ACWI(オール・カントリー・ワールド・インデックス)」が人気を集めているにもかかわらず、DC市場にはその流れが届いていない。これは、DC市場が企業年金制度として制度に採用された投資商品にしか投資ができないという事情による。制度を運営する企業や、それをサポートする運営管理機関は、もっぱら加入者のために制度を運営すべき義務を負っているが、現在の制度の運用商品ラインナップは十分に加入者の希望をかなえているのだろうか?
たとえば、「外国株式インデックスファンド」の1年トータルリターンは36%程度だが、「S&P500」は40%だ。年間4%程度の差であっても、最大で40年近くも運用するDC市場では将来的に大きな差となってくる。あるいは、公募投信市場では最近、話題になっているインド株に投資するファンドも、DC市場の売れ筋にはなかなか上がってこない。インド株に投資するファンドの中で、資金流入額が大きな「HSBCインド・インフラ株式オープン」は1年トータルリターンが76%だった。
もちろん、DC運用は1年などという短期間の運用成績の良し悪しを問うようなことはなく、20年、30年という長期の目線で考えるべき運用だ。しかし、現実の運用実態として、多くの加入者が外国株式ファンドを望み、資金も外国株式に集中している。本来であれば、「バランス型」が人気の中心であっても良いところだが、現実は、パフォーマンスの高い商品を加入者は求めているのだろう。その加入者の希望に、できるだけ応えるような商品選定を行い、適宜、その内容を見直しているのだろうか?毎月、資金流入ランキングで「外国株式インデックスファンド」がずらりと並ぶ実態が何カ月にわたっても続いている現状は、改善の余地が大きいのではないだろうか。
トータルリターン1位は2カ月連続「DC次世代通信関連 世界株式戦略ファンド」
個別ファンドの過去1年間のトータルリターンランキングトップは、前月と同様に「DC次世代通信関連 世界株式戦略ファンド」になった。前月は第2位だった「DCトヨタ自動車/トヨタグループ株式ファンド」はトップ10圏外に後退した。トップ10は、外国株式ファンドばかりになった。
トップ10の中で6銘柄はアクティブファンドが占めているが、その他4銘柄はインデックスファンドで、中でも「S&P500」に連動するインデックスファンドが3銘柄もランクインしている。「S&P500」を超えるパフォーマンスを上げる米国株ファンドは少ないというのが実態であり、DC専用ファンドはまだラインナップされて間もないものの、このパフォーマンスの良さが続けば遠からず主力ファンドの1つに位置付けられそうだ。
ただ、公募投信市場においては、「野村 世界業種別投資シリーズ(半導体)」が1年トータルリターンで103%という成績をあげている。これに対して、DC専用ファンドのトップパフォーマーが63%にとどまるというのは、大きく見劣りする。「野村 世界業種別投資シリーズ(半導体)」は過去10年パフォーマンスでもカテゴリーでトップの成績になるなど、長期にわたって良いパフォーマンスをあげ続けているファンドだ。その結果、純資産総額も4,600憶円を超えるほど大きなファンドになった。DC市場も、より柔軟に人気商品の品ぞろえが進むような状態が望ましいのではないだろうか。
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