資金流入が集中する先進国株式インデックスファンドは信託報酬率が年0.10%を下回る=DC専用ファンド(2023年8月)
DC専用ファンドの2023年8月の純資金流出入額(速報値)は約644億円の資金流入超過になった。資金流入超過は2020年12月以降33カ月連続になった。流入額のトップは前月と同様に「先進国株式」で資金流入額は前月の約288億円から約311億円と増大した。次いで、「バランス」の約141億円だった。前月は「先進国株式」に「国内株式」が続いて資金流入上位だったが、「国内株式」の流入額が約86億円に縮小し、資金流入額の水準を維持した「バランス」が上位に立った。一方、「REIT」は約0.2億円の資金流出で、5カ月連続の資金流出になった。
DC専用ファンド全体の純資産総額は約11兆1,296億円と前月から約1,282億円増加して史上最高を更新した。残高の内訳は、株式ファンド51%、債券ファンド14%、バランスファンド34%という割合で、前月と同じだった。(※個別のDC規約では、DC専用ファンド以外のファンドを制度に採用している場合があるため、DC専用ファンド全体の純資産総額は、国内DC制度全体で運用されているファンドの残高とは一致しない)
資金流入額ランキングのトップは「野村 外国株式インデックスF(確定拠出年金)」
DC専用ファンドの過去1カ月間の純資金流入額ランキングのトップは、前月と同じで3カ月連続で「野村 外国株式インデックスファンド・MSCI-KOKUSAI(確定拠出年金向け)」だった。第2位には「野村DC外国株式インデックスファンド・MSCI-KOKUSAI」が入り、第3位に前月2位の「三井住友・DC外国株式インデックスファンドS」が入った。トップ10のうち、8本を先進国株式インデックスに連動するインデックスファンドが占めた。残る2本は、前月と同様に国内株式(TOPIX連動型)のインデックスファンドとバランス型ファンドだった。
DC専用ファンドで信託報酬率の引き下げが続いている。今月の第1位と第2位の2ファンドの「野村 外国株式インデックスファンド・MSCI-KOKUSAI(確定拠出年金向け)」と「野村DC外国株式インデックスファンド・MSCI-KOKUSAI」については、2023年6月27日に年0.1023%(税込み)だった信託報酬率を年0.09889%(同)に引き下げている。第5位に入っている「DCニッセイ外国株式インデックス」も信託報酬率が年0.09889%(同)であり、年0.1%を下回る水準に引き下げる動きが強まっている。このような信託報酬率の引き下げは、退職までの長期にわたる投資を続ける加入者にとって大きなメリットになることであり、先行して信託報酬率の引き下げが進んでいる外国株式インデックスファンドがDC市場で強く支持される要因の1つになっているようだ。
ちなみに、国内株式ファンドについては、野村アセットマネジメントが7月31日に日経平均株価に連動する「野村 日経225インデックスファンド(確定拠出年金向け)」の信託報酬率の引き下げを発表しているが、変更前の信託報酬率が年0.275%(税込み)を年0.154%(同)に引き下げるというものだった。国内株インデックスファンドの信託報酬率は引き下げられたとはいえ年0.15%程度であり、年0.10%を下回っている先進国株式インデックスファンドと比較すると、まだ高い水準にある。
トータルリターンのトップは「クスリのアオキホールディングス株式F(DC)」
個別ファンドの過去1年間のトータルリターンランキングトップは、前月に引き続き「クスリのアオキホールディングス株式F(DC)」だった。第2位も前月同様の「DCダイワ中小型株ファンド」。トップ10にランキングされたファンドのうち9本が国内株式を対象とするファンドになった。外国株式を主たる投資対象とするファンドで唯一、「野村 世界ESG株式インデックス(確定拠出年金)」が第7位でランクインしている。同ファンドは、「FTSE4Good Developed 100 Index」に採用されている、または、採用が決定された銘柄の株式を主要投資対象とするインデックスファンドで、過去5年のトータルリターンが年率17.86%(カテゴリー平均10.72%)、10年で14.84%(同10.09%)と長期でも優れたパフォーマンスを残している。
一方、国内株ファンドではバリュー株(割安株)に投資するアクティブファンドがランキングに目立っている。第3位の「三井住友・バリュー株式年金ファンド」、第5位の「DCファンダメンタル・バリューF」、第9位の「DCアクティブバリューオープン」など、バリュー戦略(割安株を選んで投資する戦略)をファンド名で明示しているファンドの他、第2位の「DCダイワ中小型株ファンド」も運用プロセスの中でバリュー戦略の考え方を入れている。国内株式が一時の低迷を脱して日経平均株価が33,000円程度に上昇してきたこともあって、より割安な銘柄への投資を選好する意識が強まっているのかもしれない。
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