iDeCo改正の議論が始まる、新NISAの使い方にも関わる「第2の柱」の拡充策に注目
厚生労働省の社会保障審議会(企業年金・個人年金部会)で企業年金やiDeCo(個人型確定拠出年金)などの制度改定に向けた議論が始まった。4月13日に再開された議論では、加入可能要件、拠出限度額、また、手続等の簡素化、投資教育・指定運用方法の検証など、自助努力の私的年金制度の利用拡大をめざすため、幅広い範囲を検討する議論を予定している。iDeCoが代表する個人年金は、現在のところ自営業や会社員・公務員、あるいは、専業主婦(夫)など、加入者の立場によって掛金の限度額が異なり、もっとも加入者数が多い会社員の限度額は最大で月2.3万円(年27.6万円)でしかなく、2024年から始まる新NISAの「つみたて投資枠」の年間120万円などと比較すると小さな枠になっている。今回の改定で、加入要件が簡素化され、掛け金の上限も引き上げられることになると、「老後の資産形成はiDeCo、新NISAは老後資金以外の目的で使う」など、新NISAの使い方にも影響が及ぶ。今後の議論に注目していきたい。
4月13日の会合で、今後の検討課題として厚労省が例示した視点は、以下の3点。(1)国民の様々な働き方やライフコースの選択に対応し、公平かつ中立的に豊かな老後生活の実現を支援することができる私的年金制度の構築。ここでは、加入可能要件、拠出限度額、受給方法などの拠出時・給付時の仕組み等が議論の対象になるとした。(2)私的年金制度導入・利用の阻害要因を除去し、より多くの国民が私的年金制度を活用することができる環境整備。制度のわかりやすさ、手続等の簡素化、企業年金等の普及促進(特に、中小企業)、周知広報等を議論。そして、(3)制度の運営状況を検証・見直し、国民の資産形成を促進するための環境整備。投資教育・指定運用方法の検証、自動移換金対策、運用体制・手法の検証、従来の制度改正で提起された課題等を議論としている。
iDeCoについては、岸田内閣が進める「資産所得倍増プラン」の「第2の柱」(第1の柱は「NISA」)に位置付けられ、「公的年金加入者(6,725万人)と比較すると制度利用者が約240万人と限定的であり、さらに利用を進める余地が大きい」とされている。利用促進のために、「加入可能年齢の引き上げ」、「拠出限度額の引き上げ」、「受給開始年齢の上限の引き上げ」、「手続きの簡素化」などの制度改正が必要と指摘されている。いずれも2024年の公的年金の財政検証に併せて所要の法制上の措置を講じるとされてきたことから、今回の議論によって、具体的な加入要件や拠出限度額などの着地点を決めることをめざすと考えられる。
さらに、今回の議論では、制度の普及や利用拡大を促すために、「消費者に対して中立的で信頼できるアドバイスの提供を促すための仕組みの創設」、「企業による資産形成の支援強化(iDeCoプラスの利用促進など)」、「金融経済教育の充実」なども議論の対象に加えるとされ、これらは、私的年金の普及にとどまらず、NISAをはじめとした国民の資産形成全般にかかわる課題でもある。「中立的で信頼できるアドバイザー」や「金融経済教育の充実」などは、社会的なインフラといえる部分なので、企業年金・個人年金部会だけで議論が完結するものではないだろうが、どこまで具体的に議論が進むものかを見守っていきたい。
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