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iDeCo2月の新規加入者は4.1万人で10カ月ぶりに前年同月比割れ、「新しいNISA」に関心移る?

2023/04/03 16:48

 国民年金基金連合会が4月3日に発表したiDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)の業務状況によると2月の新規加入者数は4万1,288人で加入者総数は286万2,185人になった。新規加入者数は前年同月比6.7%減となり、10カ月ぶりに前年同月を下回った。なお、従業員のiDeCoに企業が上乗せ拠出をするiDeCo+(中小事業主掛金納付制度)は、実施事業所数は5,705事業所、対象従業員数は3万6,046人となった。

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 2月の新規加入者の内訳は、第1号加入者は3,959人(前月3,962人)、第2号加入者は3万5,437人(前月3万9,210人)、第3号加入者は1,567人(前月1,681人)となった。前月と同様に第1号、第3号の加入が前年同月比で減少しているとともに、第2号加入者も前年同月比1.6%減と前年同月実績を下回った。また、第3号加入者は前年同月比43.8%減と大幅に減少した。そして、第2号加入者の中で、企業年金なしの新規加入者が1万8,279人(前月1万9,716人)。共済組合員(公務員)の新規加入者は6,746人(前月7,064人)となった。共済組合員(公務員)の新規加入者は前年同月比14.3%減になった。第2号加入者の中で「企業年金あり」が1万412人と前年同月比79.3%増と大きく伸びているものの、第2号加入者全体では前年同月実績を下回った。

 2022年10月1日から企業型確定拠出年金(企業型DC)加入者のiDeCo加入要件が緩和され、従来は、iDeCoへの加入を認めている企業型年金規約の制度に加入している人しかiDeCoへの加入ができなかったが、規約の定めがなくともiDeCoへの加入が可能になったという制度簡素化の特殊要因によって、第2号加入者の「企業年金あり」に区分される加入者の新規加入が急速に増えている。しかし、それを除くと、iDeCoへの加入意欲は大きく減退したといえる状況になっている。

 ひとつには、自営業者である第1号や専業主婦(夫)の第3号の新規加入が鈍っていることに表れているように、電気料金や食品という生活に密接した費用(生活費)が上昇し、「年金」という将来の備えにまで十分な資金を回す余力が乏しくなってきたという現実があるように考えられる。賃金改定によって賃上げの期待がある会社員や公務員といった第2号加入者の加入鈍化は比較的穏やかだが、第1号や第3号では鋭角的に新規加入者が減少している。

 また、昨年末以来、2024年から始まる「新しいNISA」が話題となり、非課税限度額が大幅に引き上げられ、さらに、運用期間が無期限になったことから、非課税の資産形成手段としてのiDeCoへの加入意欲が減退したという側面もありそうだ。「新しいNISA」の加入限度額は、1人あたり1,800万円となり、従来の一般NISAの600万円やつみたてNISAの800万円を大幅に上回る。iDeCoは加入限度額に制限はないものの、年間の掛金に上限が設けられている(企業年金がない会社員で月額2.3万円=年27.6万円、公務員で月額1.2万円=年14.4万円など)。「新しいNISA」では、「つみたて投資枠」では年120万円(毎月10万円の積立投資が可能)、「成長投資枠」では年240万円の投資枠があり、iDeCoよりもはるかに大きな金額が投資できる。しかも、iDeCoの場合は、加入者が60歳になるまで資金を引き出すことができないが、「新しいNISA」ではいつでも換金・引き出しができる。

 もちろん、iDeCoには受け取り時に税額控除の仕組みがあるなど、「個人年金」であるが故のメリットもある。60歳まで引き出しができないというデメリットも、老後資金をしっかり残すという年金としての性格を考えれば、強制的に資金を老後に残すというメリットにもなる。さらに、運用の利便性という点では、iDeCoでは投資商品を入れ替えるスイッチングが行えることから、NISAよりも柔軟な運用が可能になっている。ただ、単なる「節税口座」として考えると、iDeCoよりも「新しいNISA」の方が使い勝手が良いということになるだろう。今後は、「老後生活のための資金づくり」という本来のiDeCoの目的に沿った使い方が強く意識されるようになるだろう。

 これまで、人生の3大支出といわれてきた「老後」、「住宅」、「教育資金」という3つの資金づくりのうち、「教育資金」については子育て支援の政策が手厚くなり、以前ほどには深刻な資金不足を心配しなくともすむような環境になりつつある。その中で、「老後」の資金づくりは、高齢化の進展とともに年々、その重みが増してきているように感じられるのではないだろうか? iDeCoと「新しいNISA」を組み合わせて、無理のない資金づくりができるようなマネープランを考えたい。

    
    

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