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iDeCo11月の新規加入者は5万人超、NISA恒久化で唯一の超長期運用制度としてのメリットがはく落

2023/01/04 17:06

 国民年金基金連合会が1月4日に発表したiDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)の業務状況によると2022年11月の新規加入者数は5万621人で加入者総数は273万6,944人になった。新規加入者数は前年同月比36.8%増となり、7カ月連続で前年同月を上回り、月間新規加入者も2カ月連続で5万人の大台を超えた。なお、従業員のiDeCoに企業が上乗せ拠出をするiDeCo+(中小事業主掛金納付制度)は、実施事業所数は5,320事業所、対象従業員数は3万4,312人となった。

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出所:モーニングスター作成

 11月の新規加入者の内訳は、第1号加入者は4,730人(前月4,989人)、第2号加入者は4万3,304人(前月4万3,959人)、第3号加入者は2,227人(前月2,282人)となった。第2号加入者の中では、企業年金なしの新規加入者が1万9,845人(前月2万1,358人)。共済組合員(公務員)の新規加入者は6,134人(前月7,484人)となった。

 企業年金ありの第2号加入者の新規加入が1万7325人と前月(1万5,117人)に続いて大幅増になった。10月1日から企業型確定拠出年金(企業型DC)加入者のiDeCo加入要件が緩和され、従来は、iDeCoへの加入を認めている企業型年金規約の制度に加入している人しかiDeCoへの加入ができなかったが、規約の定めがなくともiDeCoへの加入が可能になった。制度改正によって、新規加入者が爆発的に大きく伸びることは、たとえば、2017年1月にiDeCoの加入が第3号被保険者や公務員にまで拡大した時に、それまでは1万人に満たなかったiDeCo(2016年12月の新規加入者数は8,306人)の新規加入者数が2万6,705人と前月比3.2倍に急増したことなど、これまでも繰り返し起こっている。企業年金がある企業に勤めている人は、2022年10月以降は、いちいち勤め先にiDeCo加入のための書類を用意してもらう必要がなくなったため、潜在ニーズが一気に表面化したものと考えられる。

 このような制度変更にともなうiDeCoの新規加入状況の変化は、今後はNISA(少額投資非課税制度)の制度変更の影響が表れてくるようになると考えられる。2024年からNISAが恒久化される。それまでは、NISAは期間限定の制度であり、20年を超えるような超長期運用で投資収益非課税のメリットがあるのはiDeCoなど確定拠出年金に限られていた。それが、NISAの恒久化によって、超長期投資でもNISAが活用できるようになる。しかも、iDeCoなど確定拠出年金は、運用商品の選択が運営管理機関が選定した商品に限られるため非常に限定的である。さらに、iDeCoに入金した資金は60歳になるまで引き出すことができない。iDeCoは老後の生活資金専用の口座であることが、より一層明確に意識されるようになるだろう。その点では、資産形成のための口座としてNISAの活用は拡大するだろう。子供の学費として、あるいは、住宅の頭金としてでも、NISAであれば貯えた資金をいつでも換金することができる。NISAの利用拡大と同じくして、iDeCoの新規加入の伸びは低下していくと考えられる。

 一方、老後の生活資金としての活用が明確になることによって、たとえば、中小企業が従業員のために資金拠出するiDeCo+(イデコプラス)の利用拡大が期待される。日本には従業員300人以下の中小企業が約360万ある(中小企業庁の調査、2016年6月時点)が、そのうちわずか5,000社程度が利用しているに過ぎない。iDeCo+は、従業員が加入しているiDeCoに事業者が掛金を上乗せして支給する制度で、従業員の老後資金の準備を事業主が支援することができる。高齢社会の進展にともなって、就労期間の長期化が進んでいるが、iDeCo+を実施することで、従業員の老後生活を不安なく送るための資金づくりを援助することができる。確定拠出年金制度は米国でも企業主導で拡大した制度だ。日本においては、iDeCo+が制度普及のカギになると考えられる。今後の発展を期待したい。

    
    

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