iDeCoニュース

確定拠出年金(DC)の運用で「預貯金」の比率が30%割れ、リスク商品(投信)の「外国株式型」が急拡大

2022/12/14 18:33

 運営管理機関連絡協議会がまとめている「確定拠出年金統計資料」の最新版(2022年3月末)がまとまった。個人型確定拠出年(iDeCo)の加入者数等の情報は国民年金基金連合会が毎月発表しているが、企業型確定拠出年金(企業型DC)の加入者情報、また、個人型も含めて運用資産の内容にまで及ぶ情報がまとまっており、DC制度の現状を把握するための貴重な情報になっている。今回、確定拠出年金制度が始まって以来(2001年10月施行)初めて企業型DC、個人型DCともに運用商品の選択状況で「現預金」の比率が30%を下回った。代わって、「外国株式型」の投資信託での運用比率が急速に高まっている。

 確定拠出年金の運用が「現預金」、および、「保険」といった元本確保型商品に偏っていることは、制度開始以来の課題として長らく議論の対象になってきた。特に、制度が導入された2001年当時は、日銀が量的緩和政策の実施に踏み切るなど、預金金利はゼロ%の時代(300万円未満の1年定期預金利回りが0.04%程度)で、確定給付年金から確定拠出年金へ移行した企業年金では、加入者が運用商品として「預貯金」のみを選択した場合は、確定給付年金時代の「想定利回り」に届かないことになってしまい、実質的に年金の減額を選択させることと等しかった。

 そもそも確定拠出年金制度の導入が議論されたきっかけは、ゼロ金利政策の導入(1999年)以来、国債等の利回りが低迷し、市場運用していた確定給付年金等の運用がうまくいかなくなり、企業が従業員に約束していた企業年金を予定通り(想定利回り)に支給するためには、年金財源を追加負担せざるを得なくなり、その負担に耐えられなくなったためという事情があった。確定給付型年金で企業が従業員の年金をまとめて運用してうまくいかないため、その年金の運用を従業員個人にゆだねるのが確定拠出年金で、企業は掛金を拠出するだけで、運用についての責任を負わなくなった。その代わりに、投資教育の実施を義務付けて、個人が自らの判断で年金資金の運用ができるようにするということが確定拠出年金法の趣旨であったのだが、実際に制度が始まってみると、加入者の運用に関する意識は低く、投資教育もほとんど効果なく、資金の大半が「預貯金」等の元本確保型商品に据え置かれた。

 制度開始から10年余りが経過した2013年3月末時点において、企業型DCの運用商品選択状況は、「預貯金」が38.3%、「保険」が20.6%で、これらを合わせた元本確保型商品比率は58.9%だった。投資信託の「国内株式型」は12.0%、「外国株式型」は6.2%、「バランス型」が12.0%という比率だった。元本確保型商品は、「保険」であっても期待できる利回りの水準は定期預金並みであり、制度発足以来、現在に至るまでゼロ%台利回りを継続している。ところが、2012年の年末に始まった第2次安倍内閣での「アベノミクス」をきっかけに、国内株価が上昇に転じて以来、国内外の株価が堅調に推移し始めたことなどもあって、DCの運用に投資信託を活用する動きが徐々に広がった。

 2018年3月末時点での企業型DCの運用商品選択状況は、「預貯金」が34.7%で、「保険」が16.8%。元本確保型商品比率は51.5%だった。5年間で元本確保型商品比率は7.4%ポイント低下したことになるが、依然として資金の過半はゼロ%台利回りで運用されていた。その後、「コロナ・ショック」で株価が大幅に下落した2020年3月末に、元本確保型商品比率が51.7%と比率を拡大したことはあったが、トレンドとして元本確保型比率は低下傾向にあり、21年3月末には45.0%、22年3月末には41.4%にまで低下した。

 この元本確保型商品比率の低下にともなって増加したのは、「外国株式型」と「バランス型」の投資信託だ。特に、「外国株式型」の配分比率の拡大は大きく、2018年3月末に8.1%だったものが、21年3月末に12.4%、22年3月末に16.0%になった。同様に「バランス型」も15.8%から、18.9%、19.5%へと残高比率を向上している。これと比較すると「国内株式型」と「国内債券型」は弱含んだ横ばいだ。「国内株式型」は2018年3月末に14.2%だったが、21年3月末は13.2%、22年3月末は12.5%になった。「国内債券型」は5.5%から、5.2%、4.8%だ。退職までの30年~40年という長期の運用期間を活かすためには、成長資産である株式を積極的に活用した運用がふさわしいというのが資産運用業界に一致した考え方だが、DC加入者の投資行動は「外国株式型」にかなり傾斜していることがわかる。

01.jpg

出所:モーニングスター作成

 一方、個人型(iDeCo)では、元本確保型商品からリスク商品へのシフトは、より鮮明に起きている。2018年3月末に元本確保型商品比率が60.1%だったが、21年3月末に44.3%、22年3月末には37.7%にまで低下した。この間に、「外国株式型」は8.2%から、18.0%、24.5%に比率を拡大し、「バランス型」も10.7%から、15.1%、15.9%になっている。個人型では22年3月末に「預貯金」が27.3%でトップだが、「外国株式型」が24.7%にまで迫っており、これが逆転することが起きるかもしれない。

02.jpg

出所:モーニングスター作成

 2022年になって、米国株式市場が下落に転じるなど、2021年末まで続いた「株高の時代」とは異なる動きになってきた。日本の金利はゼロ%台に据え置かれたままだが、米国をはじめ主要国の金利は急速に進んだインフレへの対応策として急速に引き上げられた。たとえば、米国の政策金利は、22年3月までは0.00%~0.25%だったものが、11月までに3.75%~4.00%に引き上げられ、12月にも一段と引き上げられる見通しだ。これに伴い、米国10年国債利回りは2022年の年初に1.5%台だったものが、12月までに3.5%前後に上昇した。年初にゼロ%台だった欧州の10年国債利回りも直近で英国債が3.3%程度、独国債が1.9%台へと上昇してきている。10年国債利回りが2%~4%程度になってくると、長らく低迷してきた債券への評価も変わってくるだろう。

 日本においては、預貯金金利や国債利回りはゼロ%台のままだが、インフレ率(消費者物価指数の前年比)は3%台に乗せてきている。ゼロ%の「預貯金」では、実質的に資産価値が目減りしている状況が明確になっている。国内の物価は現在の3%台から徐々に低下していくという見通しが強いものの、ロシアのウクライナ侵攻に始まった地政学リスクなどの影響によるインフレ懸念は簡単には収まらないという見方もある。長期の積立運用を行うDC制度にあって、依然としてゼロ金利の「預貯金」が運用比率でトップにあることは、運用の効率性を考えるとかなり歪な状況にみえる。インフレが実感されるようになった今、この比率がどのように変化していくのか注目していきたい。

    
    

バックナンバー

  1. 先進国株式に月間500億円を超える過去最大の資金流入、国内債券から資金流出継続=DC専用ファンド(2024年2月) ( 2024/3/08 17:12)
  2. 純資産総額が12兆円の大台越え、先進国株式インデックスファンドへの旺盛な資金流入が続く=DC専用ファンド(2024年1月) ( 2024/2/07 17:39)
  3. 先進国株式ファンドへの資金流入が継続、1年リターン32%超のインデックスファンドがけん引=DC専用ファンド(2023年12月) ( 2024/1/11 15:33)
  4. 純資産総額は3カ月ぶりに過去最高を更新、日本株ファンドからは資金流出=DC専用ファンド(2023年11月) ( 2023/12/12 16:18)
  5. トータルリターンは日本バリュー株ファンドが年25%超でトップ10の6割占める=DC専用ファンド(2023年10月) ( 2023/11/08 14:06)
  6. トータルリターンのトップ10は日本株アクティブファンドが席巻=DC専用ファンド(2023年9月) ( 2023/10/06 16:42)