iDeCo8月の新規加入者は4.77万人、4カ月連続で前年同月を上回り加入者総数は260万人を突破
国民年金基金連合会が10月3日に発表したiDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)の業務状況によると8月の新規加入者数は4万7,720人で加入者総数は260万4,905人になった。新規加入者数は前年同月比8.5%増となり、4カ月連続で前年同月を上回った。なお、従業員のiDeCoに企業が上乗せ拠出をするiDeCo+(中小事業主掛金納付制度)は、実施事業所数は4905事業所、対象従業員数は3万1,469人となった。
出所:モーニングスター作成
8月の新規加入者の内訳は、第1号加入者は5,419人(前月5,432人)、第2号加入者は3万9,528人(前月4万3,239人)、第3号加入者は2,288人(前月2,371人)となった。第2号加入者の中では、企業年金なしの新規加入者が2万4,579人(前月2万7,944人)。共済組合員(公務員)の新規加入者は9,179人(前月9,170人)となった。
iDeCoの新規加入は、引き続き前年同月比2ケタ手前増の高い水準で伸びている。小麦や缶ビールなど日常的に消費する食品が全国的に値上げされ、この10月1日には飲料・食品だけで6,442品目が一斉に値上げされたとニュースが伝えている。今年1年間では値上がりする品目は2万品目を超えるという。ガソリン価格を始め、電力やガスなども単価が高くなってきているため、家計の支出は月額で5,000円を超えるような負担増になると試算されている。本来であれば、このようなインフレ(物価上昇)時には、新たな定例支出は抑えて、生活防衛に努めるものだ。iDeCoは60歳までは引き出せない制度になっているため、ここで加入すれば、家計の負担を一段と重くすることにしかならない。にもかかわらず、iDeCoへの加入意欲が衰えず、かつ、1カ月当たりの掛金の金額も継続的に上昇しているのは、長寿社会を迎えた日本において「老後の資金」がかつてなく重要であるという認識が広がっているためと考えられる。
家計支出をみると、2人以上世帯の消費支出は2022年7月現在で28万5,313円で、これは、5年前(2017年7月)に対して2.9%増の水準だが、うち、「食料」に対する支出は8万2,750円で、5年前比では4.16%増になっている。増加額は3,304円だ。食料品の値上げは確実に家計を圧迫していることがわかる。一方、携帯電話料金など通信費については、携帯キャリアから格安プランが出そろって、徐々に家計負担が少なくなる方向にある。「通信」の支出は1万1,992円で5年前比7.42%減だ。減額幅は961円なので、この金額でiDeCoの掛金を賄うことはできないが、「電気代」(5年前比16.85%増)、「ガス代」(同12.26%増)などが負担増となっていることを考えると、支出を抑えられる項目があることはありがたい。
このように家計の現状を数値で確認すると、iDeCoの平均掛金である月額1万6,197円は、決して小さな支出ではない。ただ、この支出が30年後には累計で583万円となり、これを年率5%で運用できれば30年後には約1,326万円をつくることができる。厳しい家計をやりくりして、せっかく老後への備えとしてiDeCoを始めたのであれば、運用利回りがゼロ%の定期預金等の元本確保型商品で運用するのではなく、ぜひ、投資信託を使ったリスク資産で積み立てることを考えていただきたい。苦労して拠出した資金が、30年後に583万円なのか、1,326万円なのかの差は大きい。
もちろん、リスク性資産に確定的な利回りなどはなく、今後、必ずプラスになるという保証もない。それだけに、リスク商品での積立に躊躇する気持ちは理解できるが、米国や欧州の国民は、iDeCoと同等の確定拠出年金で株式ファンドを積極的に活用することによって大きな老後資産を実現してきたという事実がある。リスク資産への積立投資は、リスクを軽減し、長期での資産形成を実現する手段として広く推奨されている。iDeCo加入者260万人が、豊かな老後を迎えられることを願ってやまない。
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