ESG/SDGsファンドはDCと相性抜群、新規設定が相次ぎトレンドに
コロナショックがESG(環境・社会・企業統治)投資やSGDs(持続可能な開発目標)への関心を高めている。未知なるウイルスに対する不安が、地球そのものへの不安をかきたて、気候変動などの環境問題を改めて意識するきっかけにもなっている。投信市場でも、ESGやSDGs、インパクト投資などに着目したファンドが相次いで設定されている。10月にも26日に野村アセットマネジメントが「野村 環境リーダーズ戦略ファンド」(Aコース/Bコース)、30日にはブラックロック・ジャパンがDC(確定拠出年金)専用ファンド「ブラックロック・世界株式インパクト投資(DC)『愛称:明日(あした)をつくる』」をそれぞれ新規設定予定だ。近年は、DC専用ファンドとしてESG/SDGs関連ファンドが設定されるケースが目立っている。
ESG関連ファンドの今年最大のトピックスは、7月に設定されたアセットマネジメントOneの「グローバルESGハイクオリティ成長株式(H無)『愛称:未来の世界(ESG)』」が3800億円を超える巨額の設定額となり、その後も資金流入が継続し、瞬く間に6,600億円に迫る純資産総額のファンドに成長したことだろう。アセットマネジメントOneの「未来の世界」シリーズは人気ファンドだったが、「未来の世界(ESG)」は、その本家といえる「グローバル・ハイクオリティ成長株式ファンド(H無) 『愛称:未来の世界』」(残高:6,272億円)を凌駕する純資産残高になってしまった。
「未来の世界(ESG)」の設定来の資金流入額(週次)
※ 資金流入額はモーニングスターの推計値
出所:モーニングスター作成
10月16日現在で、ファンド名に「ESG」が入っている国内公募ファンドは29本で、残高合計は約6,884億円。うち、「未来の世界(ESG)」が約6,600億円を占めるため、ほぼ独壇場となっている。ただ、11本は今年になって設定されたファンドであるため、これからの成長が期待される。この今年新設されたファンドのうち、野村アセットの「世の中を良くする企業(野村日本株ESG投資)(DC)」、アセマネOneの「OneグローバルESG厳選株ファンド
しかも、「世の中を良くする企業(野村日本株ESG投資)(DC)」や「ブラックロック・世界株式インパクト投資(DC)『愛称:明日(あした)をつくる』」など、DC専用ファンドのために、わざわざ新たにマザーファンドを立ててファンドを新設しているところに近年の特徴がある。
従来は、DC専用ファンドというと「ターゲット・イヤー・ファンド」など、DC向けに開発されたファンドを除くと、主には一般の公募ファンドで一定程度の残高があるファンドを、販売手数料無料として信託報酬も引き下げたベビーファンドを作ってDC専用ファンドにするパターンが一般的だった。わざわざDC用に、手間暇もコストもかかるアクティブファンドを設定するという動きにはならなかった。DCの市場が年々拡大し、企業型DCで12.5兆円、個人型DCで1.9兆円、合計で14.4兆円になり(2019年3月末)、規模の魅力も大きくなってきたためDC専用ファンドへの力の入れ方が変わってきたと考えられる。
また、DCは加入者が60歳になるまでは原則解約(換金)ができない仕組みであるため、20代で加入した加入者は40年近い長期投資をする制度になっている。制度内で運用商品の入れ替え(スイッチング)は自由にできるため、1つのファンドで40年間継続して投資するということではないが、長期投資を行う制度の性格から中長期の企業価値の向上をめざすESG投資とは相性が良いといえる。
一方、ESGファンドやSDGsファンドと比較すると、インパクト投資ファンドに残高が大きなファンドが目立つ。10月16日現在で、ESGファンドの1本あたり残高は約10億円(「未来の世界(ESG)」を除く)、SDGsファンドが約42億円、インパクト投資ファンドが約333億円になっている。インパクト投資は、環境や社会へのインパクトと同時に投資リターンをめざすというスタンスが、投資商品としての魅力につながっているのだろう。10月30日に設定される「ブラックロック・世界株式インパクト投資(DC)『愛称:明日(あした)をつくる』」は、DC専用ファンドとしては初のインパクト投資ファンドでもある。DC専用ファンドで拡大しているESG/SDGs関連ファンドの動向に注目していきたい。
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