iDeCoを使った自分年金づくりの始め方、取扱い金融機関で異なる商品内容に注意
退職後の生活を少しでもゆとりあるものにしようと、「iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)」を活用する人が増えている。2019年に国会でも話題になった「老後2000万円不足問題」を改めて持ち出すまでもなく、「公的年金だけでは老後の生活は厳しい」という認識は、国民的な共有知識になっていると思う。そこで、「自分年金」としてiDeCoを活用しようということだが、そのiDeCoには、どこで加入できるかご存じだろうか? iDeCoは、全国の主だった金融機関で加入できる。ただ、気を付けたいのは、加入の条件(運用商品、手数料等)が金融機関によって異なることだ。できるだけ手数料が安く、運用商品が充実している金融機関のiDeCoに加入したい。◆iDeCoへの加入は全国の金融機関が窓口
iDeCoの取り扱い金融機関は、みずほ銀行、三井住友銀行、三菱UFJ銀行といったメガバンクから信託銀行や地方銀行、野村證券、大和証券といった大手証券、SBI証券やマネックス証券などのネット証券、日本生命や第一生命、住友生命といった生命保険会社、東京海上日動、三井住友海上など損害保険会社の他、信用金庫、信用組合、労金やゆうちょ銀行、JAでも取り扱っている。全ての金融機関ではないが、全国をカバーしているので、いつも利用している銀行や証券会社の窓口で問い合わせてみるのが、iDeCoを始めるスタートになる。
ただ、iDeCoを始めるならどこでもいいということではない。金融機関によって、取り扱うiDeCoの内容が異なっていることに注意が必要だ。そもそもiDeCoは、毎月一定金額を拠出し、投資信託や定期預金などの金融商品を選んで、老後の資金として60歳まで運用を継続する制度だ。従来は、会社型確定拠出年金を転職等によって継続できなくなってしまった人の受け皿として設置されていた個人型確定拠出年金制度が、2017年1月から広く国民が利用できるようになった。そもそもの確定拠出年金制度がスタートしたのが2001年10月。それから、16年を経過して、制度の大改革が行われた。その機会に、iDeCoの内容を大幅に見直した金融機関が少なくない。
iDeCoは、掛金として拠出する金額が全額所得控除の対象となるほか、運用益非課税、そして、資金の受取り時には「退職所得控除」(一時金の場合)、「公的年金等控除」(年金受取の場合)という優遇税制が活用できるという非常に有利な制度になっている。ただ、60歳までは資金を引き出すことができないので、老後のためという目的で資金を拠出するという覚悟が必要だ。住宅の頭金や子供の学資のための資金は、iDeCoでは積み立てられない。住宅資金や学資のための積立には、「つみたてNISA」という別の制度があるので、そちらを利用するといい。
◆iDeCoを選ぶポイントは「手数料」と「運用商品」
さて、iDeCoの金融機関による違いは相当大きい。その違いは、「手数料」と「運用商品」に大別される。
iDeCoの「手数料」は、全てのiDeCo加入者にかかる手数料と、金融機関によって異なる手数料がある。全てのiDeCo加入者にかかる手数料は一律だ。たとえば、加入時に一度だけかかる「加入・移換時手数料」は、2829円(税込み)で全国一律だ。そして、毎月の手数料として掛金納付の都度105円(税込み)がかかる。これは掛金の振込手数料のようなもので、この金額も全国一律だ。さらに、資金を管理している信託銀行の手数料が66円(税込み)かかる。この合計で171円は、どこの金融機関で申し込んでも必ず必要となる手数料だ(ごく一部で信託銀行の手数料が55円のところがある)。さらに、金融機関によって毎月143円~458円の手数料を上乗せして徴収している。この金融機関ごとの手数料(運営管理機関の口座管理料)は無料にしているところもある。
加入後に毎月かかってくる手数料が171円か629円かという手数料の格差が意味するところは大きい。たとえば、iDeCoで毎月1万円を拠出して積立を行う場合、毎月の手数料が171円なら、その手数料は掛金に対して1.71%になる。ところが、629円の場合は6.29%だ。投信を選ぶ際にチェックする信託報酬は、以前は2%、3%というものがゴロゴロしていたが、近年では1%以下にすることが意識されている。そう考えると、それ以外にかかる手数料が1.71%というのは、相当高い。ただ、これは、制度として全国一律なので受け入れるしかない。
なぜ、このような高過ぎる手数料が設定されているかというと、実際にiDeCoを利用すると掛金の全額所得控除が適用されるため、例えば、毎月1万円を拠出して、課税所得が195万円以下の場合、年間拠出額12万円の15%に相当する1万8000円の税控除が受けられるメリットがある。たとえ、毎月629円(年間7548円)を支払っても、iDeCoに加入して毎月1万円を拠出することで得られる税メリットの方が大きいのだ。ただ、当然だが、運営管理機関の口座管理料が無料のところから選びたい。
また、「運用商品」の数と内容も、金融機関によって異なっている。運用商品の数は、法令によって最低3本、最大35本という上限がある(運用商品のうち、ターゲットイヤーファンド/ターゲットデートファンドについては、1シリーズを1本でカウント)。運用商品数は、金融機関によって3本から35本まで様々だ。そして、さらに商品の内容を調べていくと、商品の種類(元本確保型商品と投資信託、そして、投資信託の投資対象の違い)が異なる。近年は、投資信託の競争が激しくなり、年1%以下の信託報酬が当たり前になり、インデックスファンドでは0.1%以下の商品も出ている。この運用コストも、できるだけ低い商品を揃えているところを選びたい。
iDeCoの運用は、60歳まで長い期間続くものだ。加入することによって必要となる手数料が最低毎月171円に加えて、運用商品でも手数料がかかってくるので、このトータルの手数料ができるだけ小さくなるようなiDeCoが望ましい。加えれば、様々な経済環境に対応できるように、運用商品としては、その投資先が国内外の株式、債券、リート、コモディティなど、幅広い投資資産を選んで投資できるようにしてある方がいいだろう。
◆コストと運用商品で優れたSBI証券「セレクトプラン」
実際にあるiDeCoの制度の中から、手数料率が低く、運用商品の品ぞろえが充実しているという制度を選ぶと、SBI証券の「セレクトプラン」が浮上する。このプランは、2018年11月に新しく登場したプランだ。それ以前の取扱い商品である「オリジナルプラン」とは異なる観点で商品が揃えられている。その商品セレクトのポイントは、「コスト」だ。
SBI証券のiDeCo「セレクトプラン」には全37本(うちターゲットイヤーが4本)の商品が揃っているが、この中には、信託報酬が0.1%を下回るインデックスファンド「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」もある。さらに、全世界株式インデックスとしては、もっとも手数料率が低い「SBI・全世界株式インデックス・ファンド」(信託報酬実質0.1102%)など、信託報酬率が低いファンドを中心にラインナップされ、国内外の株式・債券・リートからコモディティまで、投資範囲も幅広い。長期の資産運用を行う上で必要十分な商品をコストにこだわって選んだということが分かるラインナップだ。もちろん、毎月の手数料は最低の171円になっている(口座管理料は無料)。
iDeCoは、60歳まで現金化はできないが、取り扱い金融機関を変えることはできる。もっとも変えるためには、一旦は掛金を現金化して、他のプランに移すという手間もかかるため、最初から良く取扱金融機関を選んで加入し、長く運用を継続できるプランを選びたい。モーニングスターでは、「iDeCo総合ガイド」を開設し、各金融機関のプランを比較して選ぶことができるようにしている。このサイトを利用して、各金融機関が用意しているプランの手数料や運用商品を事前に選んで決めることも方法だ。納得できるプランで、将来の自分年金をつくり、退職後の安心につなげたい。
代表的なiDeCoの商品ラインナップ
※セルに色がついている商品はアクティブファンド
※3社とも運営管理機関手数料は無料だが、みずほ銀行は毎月の掛金が1万円以上、または、残高50万円以上で手数料無料を適用
出所:モーニングスター作成
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